名古屋大学生物機能開発利用研究センター 動物器官機能研究分野(理学部生命理学専攻 動物器官機能学研究グループ)

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研究紹介

研究テーマ

私達の研究室では、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)とメダカ(Oryzias latipes)を用いて、受精卵から複雑な構造と機能を有する器官が発生する過程を研究しています。研究室では大きく三つの研究プロジェクトを行っています。

体軸形成

1924年、シュペーマンとマンゴールドはイモリを用いた発生学的実験から、胚の背側組織の一部が神経・筋肉など背側組織を前後に正確に誘導する活性をもつことを示しました。この部分は背側オーガナイザーと呼ばれ、長年、発生学者の興味を魅きつけてきました。魚類・両生類では、受精卵植物極に存在する背側化決定因子が胚背側に移動し、背側胚盤細胞においてWntシグナルを活性化し、背側特異的遺伝子を活性化することにより、背側オーガナイザーの誘導を引き起こすと考えられています。さらに、背側オーガナイザーからの細胞間シグナル分子によって背腹・前後軸が形成されます。背側オーガナイザーに由来する組織は、器官形成期に左右軸を形成するために重要な役割を演じていることが分かっています。私達はこれまでゼブラフィッシュを用いて、背側オーガナイザー形成に関与する接合遺伝子カスケードを見出して来ました。また、背側オーガナイザー因子の新しい活性制御機構も明らかにし、左右軸形成のメカニズムの解析も行ってきました。現在、ゼブラフィッシュとメダカを用いて、最初に背側がどのように決まるのかを明らかにしたいと考えています。【関連トピックス

神経高次構造形成

脊椎動物の中枢神経組織は、背側オーガナイザーからのシグナルによって誘導され、中胚葉からの後方化シグナル(Wnt, Fgfシグナル等)の強弱によって前後軸に沿った神経領域が決定されます。私達は、これまで背側オーガナイザーと後方化シグナルによって制御され、中枢神経組織のパターニングや神経細胞の分化を制御する転写因子群を明らかにして来ました。

中枢神経組織の中でも小脳は、魚類から哺乳類まで構造・神経回路が保存されています。GABA作動性神経であるプルキニエ細胞と、グルタミン酸作動性神経の顆粒細胞は、異なる神経前駆細胞から形成され、異なる入力情報を受け取ります。二つの入力情報はプルキニエ細胞で統合され小脳外へ出力されることで、行動だけでなく高次な神経活動を制御しています。この単純の図式は、脳の神経回路の形成機構を明らかにする良いモデルだと考えています。また、魚類小脳では、成体になってからもニューロン新生が起こり、絶えず神経回路がリモデリングされています。私達は、ゼブラフィッシュ・メダカを用いて、プルキニエ細胞・顆粒細胞が出来る過程、特にニューロンの極性化・神経突起形成の過程を可視化し、遺伝学的手法を用いて神経回路・高次構造が形成されるメカニズムを明らかにします。また、ゼブラフィッシュとメダカを用いて小脳が高次機能を発揮するメカニズムを解明したいと考えています。【関連トピックス

神経堤細胞の分化機構

脊椎動物の体色は体表に分布する色素細胞に依存して発現します。色素細胞は神経堤から派生します。メダカには4種類の色素細胞が存在し、これらは神経堤に由来する共通の前駆細胞である色素芽細胞から分化すると考えられています。この過程は、多能性幹細胞から異なる細胞種を生み出す分化システムのよいモデルです。私達は名古屋大学に保存されている52系統に及ぶメダカ体色異常突然変異体を材料として色素細胞の分化制御の仕組みを発生遺伝学的な観点から研究しています。