生物機能開発利用研究センターのSDGs達成への取り組み
SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。SDGsでは、「誰ひとり取り残さない(No one will be left behind)」を理念とし、持続可能でより良い世界を作るために国際社会が2030年までに達成するべき17の目標(ゴール)が掲げられています。
生物機能開発利用研究センターはこれまでに、食料増産、二酸化炭素削減、エネルギー関連の新規産業の創出、健康増進や病気の診断・治療の新たな技術開発などの食料・環境・健康に関する諸問題の解決を目指して研究を行なっています。当センターの社会実装を見据えた基礎研究から応用研究までの先駆的な研究への取り組みは、SDGsの達成に貢献できると期待されます。当センターでは17のゴールの中でも、特に「SDG 1. 貧困をなくそう」、「SDG 2. 飢餓をゼロに」、「SDG 3. すべての人に健康と福祉を」、「SDG 7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、「SDG 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「SDG 13. 気候変動に具体的な対策を」、「SDG 14. 海の豊かさを守ろう」、「SDG 15. 陸の豊かさも守ろう」の実現を目指して、イネの基礎研究で世界を食糧危機から救う研究プロジェクト(WISHプロジェクト)、バイオ燃料や光スイッチ型海洋分解性プラスチックの原料として最適化したソルガム品種の開発、植物ホルモン・ジベレリンを利用した高バイオマス植物の開発、接木技術の高度化による多様性回復とモノカルチャーの共実現を目指した研究、非感染性疾患とくに精神疾患の診断と治療法の開発などを推進しています。
それぞれの研究の詳しい内容は以下をご覧ください。
- ● 発生学・システム植物学
発生学・システム植物学研究室では、農業上重要な植物の発生過程を解明し、植物成長をシステムとして理解することを通して、食料・環境問題の解決や産業活性化を目指す研究を展開しています。主な課題としては、(1) 花芽分化の決定因子・フロリゲンの分子機能解明、および(2)植物成長と環境適応を支える根の組織構造の解明を目指した研究を実施しています。
(1)では、花芽分化の決定的な誘導因子・フロリゲンの分子機能を解明します。この理解を基盤に、花芽分化にゲノム、遺伝子、分子の側面から多面的に介入する新しい植物改良の技術を開発します。
(2)植物成長と環境適応を支える根の組織構造の解明では、土壌からの養水分の吸収を担うことで植物の生存の要として機能する「根」の内部構造を最適化し、植物の成長のポテンシャルを最大限に活かすことや、植物の成長を妨げる各種のストレス要因を回避することを目指します。
これらの研究は、「SDG 1. 貧困をなくそう」、「SDG 2. 飢餓をゼロに」、「SDG 3. すべての人に健康と福祉を」、「SDG 13. 気候変動に具体的な対策を」、「SDG 15. 陸の豊かさを守ろう」に貢献します。
- ● 植物ゲノム育種研究室
植物ゲノム育種研究室では、様々な用途のあるソルガムの高バイオマス品種、及び子実型品種に注目し、SDGs達成に向けた積極的な研究を進めています。具体的には、「雑種強勢の原理解明によるバイオマス技術革新」を進めることで、二酸化炭素削減(「SDG 13. 気候変動に具体的な対策を」)、バイオ燃料の研究開発(「SDG 7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに」) 、緑化事業(「SDG 15. 陸の豊かさも守ろう」)など、それぞれに最適化した新品種育種開発を行っています(詳しくはこちら)。これらに加え、海洋汚染対策として、「海洋分解性プラスチックの原料として最適化したソルガム品種の開発」の研究も開始しました(「SDG 14. 海の豊かさをまもろう」詳しくはこちら)。また、世界で5番目の穀物であり、グルテンフリーの小麦粉代替粉になる子実型ソルガムの研究も準備も進めています(「SDG 2. 飢餓をゼロに」、「SDG 3. すべての人に健康と福祉を」)。
詳しい研究の内容は以下をご覧ください。
植物ゲノム育種研究室HP
- ● 植物遺伝子機能研究室
植物遺伝子機能研究室では、植物の遺伝子機能を解明し、その研究成果を作物育種に応用しています。具体的には、イネの収量性向上性に関わる遺伝子や草丈を制御する遺伝子など作物の有用農業形質遺伝子を同定し、これらの遺伝子を交配とDNAマーカー選抜を用いてアジアやアフリカのイネに導入しています。これまでに、遺伝子を使った品種改良によって収量性が向上したイネや倒伏しにくいイネが作出され、育成したある系統は既にベトナムの国家品種に認定されたほか、いくつかの系統は現在ケニアで国家品種登録を進めています。また南米のコロンビアでも品種評価を行っています。以上の様に植物の遺伝子研究を品種育成に応用し、様々な国で品種化と普及をすることによって世界の食糧問題軽減を目指しています(「SDG 2. 飢餓をゼロに」)。さらにこの活動は「SDG1.貧困をなくそう」、「SDG 3. すべての人に健康と福祉を」、「SDG 15. 陸の豊かさを守ろう」にも貢献します。
詳しい研究の内容は以下をご覧ください。
植物遺伝子機能研究室HP
世界の食糧危機を救うWISHプロジェクトについて(日本語)
世界の食糧危機を救うWISHプロジェクトについて(English)
- ● 生物産業創出研究室
生物産業創出研究室では、基礎研究を通して植物の生物学的な理解を深め、その研究成果に基づいて産業利用に取り組みます。具体的には、植物の伸長や花の稔性などに関わる植物ホルモンジベレリンの合成・代謝酵素やシグナル伝達因子の構造的な理解を通し、その知見をイネの草丈や着粒数の制御に応用します。また、接ぎ木に着目して研究することで、植物の組織接着や組織の修復機構を明らかにし、様々な悪環境に耐えられる植物の根に栽培種を接ぎ木することで、農作物を環境ストレスに負けずに栽培する方法を提供しようとしています。さらに、個体内の情報交換の仕組みを解明することで、生体内情報を利用した農作物の生育診断技術にも取り組んでいます。以上のように、植物の基礎研究を新技術に応用し、植物資源の価値と品質を高めることによって未来の社会に貢献します(「SDG 2. 飢餓をゼロに」)、(「SDG 7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに」)、(「SDG 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」)、(「SDG 13. 気候変動に具体的な対策を」)、(「SDG 15. 陸の豊かさを守ろう」)。
詳しい研究の内容は以下をご覧ください。
生物産業創出研究室
上口グループHP
野田口グループHP
- ● 生命糖鎖機能研究室
地球上の全ての生物において、その細胞表面は分厚い「糖鎖」の層で覆われています。しかし、この圧倒的な存在感にも拘わらず、糖鎖の存在意義は未だに謎に包まれています。生命糖鎖機能研究室では、この糖鎖の生物学的意義を解明するとともに、その未知機能を人類の健康と福祉向上、環境改善、産業応用、高等教育に役立てるための基礎および応用研究を推進しています。とくに、脊椎動物細胞のタンパク質や脂質を修飾するシアル酸に着目して、生殖系、神経系、免疫系の仕組み、およびその生合成不全と様々な病気や不健康状態との関係を解析しています。また、その代謝酵素群の不全が原因となる非感染性疾患である代謝病や精神疾患に焦点をあてて、それらの病理学的研究を行うと共に、診断と治療法の開発(「SDG 3. すべての人に健康と福祉を」)とその産業基盤の確立(「SDG 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」)を目指しています。とくに、マウスやメダカのような動物モデルを用いてゲノム、プロテオーム解析に加えてグライコーム解析を行って生殖の維持や向上および健康や病態の鍵を握る糖鎖の探索を行っています。また、海産動物のグライコーム解析を行って、その生存向上および水圏環境改善の手がかりを探る基盤研究も行っています(「SDG 14. 海の豊かさを守ろう」)。さらに、先端研究を通して博士後期課程学生教育の充実やジェンダー課題に挑む人材育成にも取り組んでいます(「SDG 4. 質の高い教育をみんなに」、「SDG 5. ジェンダー平等を実現しよう」)。
詳しい研究の内容は以下をご覧ください。
生命糖鎖機能研究室HP
糖鎖生命コア研究所