研究内容

糖鎖は単糖が縮重合してできる生体物質であり、例外なく全ての細胞の表面は糖鎖により覆われています。糖鎖は細胞の集合化と組織・臓器形成、外界から侵入する非自己細胞の認識や排除などいわば細胞社会のコミュニケーションに関わる重要な生命情報分子です。核酸とタンパク質は単量体が規則正しく直鎖上に配列する比較的単純な構造を持つ一方で、糖鎖は単糖が多様に連結、枝分かれして配列する複雑な構造をもちます。また均一で厳格な構造をもつ核酸やタンパク質に対して、糖鎖の構造は不均一であいまいです。このようなユニークな特徴をもつ糖鎖が、何故細胞社会のコミュニケーションを媒介することができるのかは不思議です。現在、我々はこの糖鎖の謎の解明に挑むべく以下の課題で研究を行っています。

1. 受精・初期発生における新しい細胞間相互作用の発見と解析

Singer-Nicolsonの細胞膜モデルの提唱によって、細胞生物学が一変したように、細胞膜モデルは生物学の行方を左右する重要なテーマです。我々は細胞膜上に存在するタンパク質、脂質が等方的に分布するのではなく、ミクロドメインという単位の集合体として細胞膜を捉えるという新しい概念の確立を目指し、受精における精子と卵の相互作用や初期発生過程の細胞間相互作用解析を棘皮動物や魚類で研究しています。

受精におけるミクロドメイン相互作用

2. シアル酸の多様性の解析

シアル酸の構造、機能、生合成機能の解明と有用生理活性分子としての利用

シアル酸は9つの炭素骨格からなるカルボキシル基に起因する負電荷をもつ単糖であり、2-ケト3-デオキシノノン酸誘導体の総称です。N-acetylneuraminic acid (Neu5Ac), N-glycolylneuraminic acid (Neu5Gc), deaminoneuraminic acid (KDN)が3大分子種であり、それらのアセチル化、硫酸化などの置換体が知られています。この分子種多様性は他の単糖にはない特徴であり、シアル酸が独特な生物学的機能をもつと考えられる一つの根拠です。現在我々はこのシアル酸構造多様性の謎を解明すべく、その構造、存在分布、生合成機構の解明を行っています。

シアル酸の生合成経路

名古屋大学 生物機能開発利用研究センター

動物細胞機能研究室

〒464-8601 名古屋市千種区不老町

名古屋大学生物機能開発利用研究センター505号室

Laboratory of Animal Cell Function

Biosience and Biotechnology Center, Nagoya University

505, Biosience and Biotechnology Center

Chikusa, Nagoya 464-8601, JAPAN

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